悪霊 (新潮文庫) 文庫 – ドストエフスキー (著), 江川 卓 (翻訳) 読了
ドストエフスキーの重厚な作品は、読み終えることで大仕事を成し遂げたような、満足感にひたることが出来る。
とにかく登場人物がよくしゃべる。
心の声までが書かれている。
いつのまにか、既知の間柄であるかのような錯覚に陥ってしまう。
その人を知っているのではないかというような。
小説として読みやすいとは言えない。
しかし、辛抱強く読み続けていけば、日常生活しか描かれていないドストエフスキーの作品には、世界の全てが描かれているのだと気づかされる。
世界とは何か。
衆生の心である。
刻々と変化していく心の様相である。
諸法の実相は、人の心及びその変化に過ぎない。
この作品は、思想を行動に移そうとした、ほんの数人のグループとその周辺者の話である。
かつての団塊世代が学生の頃を思い出して、学生運動の写し絵として読んでもいいし、創価学会や顕正会員が宗教の布教グループの活動を思い出してもいい。
必ずそこには、中心者・カリスマ・非協力者がいたはずだ。
元をたどれば、池田大作も浅井昭衛も、レーニンも毛沢東も、革命思想のグループで頭角を顕した、身近な存在だったはずである。
この作品に描かれたカリスマは失敗する。単なるテロリスト、殺人者として終わる。
大集会の演壇に立つこともなく、社会や国家を指導したりはしなかった。
裏を返せば、目論見が成功していれば、後世に名を残すはずであった人の素顔である。
凡夫が架空の正義に憑りつかれることの恐ろしさを、篤と味わってほしい。
登場人物の中で、自分の心の一部だと感じる人がいるはずだ。私の場合、ステパン氏(50%)、ピョートル(25%)、スタヴローギン(25%)かな。
自分にもこんな部分があると実感しながら読めるけど、同時に自分っていう人間はロクデナシだと再確認できたりもする。鏡のような小説だ。
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