全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!
北野です。
共同3月22日から。
<ロシア外務省は21日、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断すると発表した。北方領土への旧島民の墓参などを目的とした日本とのビザなし交流の停止や、北方領土での日本側との共同経済活動から撤退する意向を表明した。>
ロシアは、
<北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断する>
そうです。
なぜ?
理由は、皆さんおわかりですね?
これです。
<ウクライナ侵攻に伴う制裁に日本が加わったことへの反発が理由とみられる。
ロシア外務省の声明は、「ウクライナ情勢に関する日本側による一方的で、非友好的な関係制限」を交渉中断の理由とし「このような条件下では、両国関係にとって重要な文書の署名を議論することは不可能」と説明。「2国間関係に及ぼす損失の責任はすべて日本側の反ロシア的行動にある」と非難した。>
「責任はすべて日本側の反ロシア的行動にある」そうです。
この件で、欧米と共同歩調を取り、ロシアへの制裁を科している岸田政権を批判する人はいるでしょうか?
「岸田さんが、ロシアへの制裁を決めたせいで、北方領土が戻らない!」と。
いえいえ。
私は、そう考えている人にいいたいと思います。
「交渉しても、交渉しなくても、プーチンはそもそも北方領土を返す気はありません。そもそも返す気がないのですから、安倍さん、菅さん、岸田さん、誰が交渉しても、戻ってくることはあり得ないのです」と。(プーチンが失脚した後は、また可能性がでてくるかもしれませんが。)
お墓参りに行けなくなる旧島民の皆さんは、本当にお気の毒です。
しかし、北方領土問題に限っていえば、ロシアが交渉停止を宣言した2022年3月21日前と後で、「本質的に何も変わっていない」といえるでしょう。
▼日ロ関係の本質を知る【二つの法則】とは?
「プーチンは何を考えているかわからない」という人は、多いです。
最近は、特にそうですね。
欧米では、「プーチンは精神的におかしいようだ」という話が諜報界でもでている。
だから、ゼレンスキーの「飛行禁止区域設定」「戦闘機供与」などができないのです。
それをやると、プーチンが「参戦した」とみなして、第3次世界大戦が勃発する。
プーチンが核を使う可能性もでてくる。
「彼は、頭がまともじゃないから、本当に核を使うかもしれない」
と恐れられているのです。
しかし、「日ロ関係」に関しては、プーチンの頭の中はクリアです。
覚えておくべき法則は、多くありません。
法則1、北方領土を返したくない。4島はもちろん、2島でも。
法則2、でも、日本の金と技術はほしい。
以上。
だから、日ロ関係の動向をみると、
1、北方領土の話をすると関係が悪化する。
2、金儲けの話をすると関係が好転する。
という、はっきりした法則性があります。
▼これまでの日ロ関係
検証してみましょう。
・2013年〜2014年2月、日ロ関係は、とても良好。
理由は、安倍さんが「金儲けの話」をしていたから。
・2014年3月〜2016年4月、日ロ関係は、悪い。
ロシアが2014年3月に「クリミア併合」したことで、日本は欧米の「対ロ制裁網」に参加した。
それで、「金儲けの話」ができなくなり、「領土の話」になった。
結果、日ロ関係は、悪化しつづけた。
・2016年5月〜2018年10月、日ロ関係は、とてもいい。
2016年5月、安倍総理はソチで、プーチンに「8項目の協力プラン」を提案しました。
要するに、「領土の話」は一休みして、「金儲けの話」に戻った。
プーチンは大喜びで、2016年12月訪日。
日ロ関係は、かつてないほど良好になりました。
・2018年11月〜現在 日ロ関係は、かなり悪い。
「日ソ共同宣言をを基礎に平和条約締結交渉を加速する」
と宣言した。
これをロシア側は、「4島一括じゃなくていいから、2島返せや!」と理解しました、
(56年の日ソ共同宣言には、「平和条約締結後、2島を返還する」と明記されている。)
日本側は、「大きな譲歩をした」のですが、ロシア側は、「また島の話をはじめやがった。金儲けの話がしたいのに」とネガティブに解釈した。
以後、ずっと関係が悪いのです。
それでも、安倍さん時代は、「また反省して変わるかもしれんな」と考え、ロシア側は比較的穏やかにしていました。
しかし、菅さんの時代になると、いよいよ本性を現わしてきた。
プーチンは2021年2月、「憲法の規定で4島は返せない」と宣言しました。
朝日新聞DIGITAL 2月15日
<ロシアのプーチン大統領が、14日に公開されたロシアメディアのインタビューで、領土の割譲禁止を盛り込んだ昨年7月の憲法改正に関連し、「日本との関係は発展させたいが、憲法に反することは行わない」と述べた。北方領土の日本への引き渡しを否定したともとれる発言で、今後の日ロ交渉がさらに難しくなる可能性がある。インタビューは10日に行われたといい、一部が14日に公開された。プーチン氏が、領土の割譲禁止を定めた改正憲法に絡めて、今後の日ロ関係についての考えを表明するのは初めてとみられる。改正憲法は、「領土の割譲に向けた行為やその呼びかけは認められない」と規定している。>
今までは、日本からお金と技術をもらうために、返還の可能性をほのめかしてきた。
ですが、盟友安倍さんは去り、菅さんは「プーチンは手ごわくてダメだ。ロシアよりも、クアッド(アメリカ、インド、オーストラリア)と仲よくしよう!」となっていた。
そして、菅さん時代、「ロシア外交」はスタートもしなかった。
それで、プーチンは、「返すフリをすることもやめた」ということでしょう。
私が何をいいたいかおわかりですね?
ロシアが、「北方領土交渉停止」を宣言した。
というか、「そもそも返す気が全然なかった」。
でも「金が欲しいから、交渉に応じるフリをしていた」というのが真相なのです。
だから、今回のロシア外務省の発表で、「事の本質は、何も変わっていない」のです。
▼中ロ分断は?
昔からの読者さんは、ご存知です。
私は、日ロ関係について、
2、しかし、中国に勝つためには、中ロを分断した方がいい。
3、だからロシアと友好関係を発展させ、中ロを分断しよう。
と大昔から主張してきました。
ちなみに、「中ロを分断するために、日本はロシアと仲良くした方がいい」といっているのは、私だけではありません。
世界一の戦略家ルトワックさんも、リアリストの神ミアシャイマーさんもいっています。
しかし、ルトワックさんが常々いっているように、戦争はすべてを変えます。
ウクライナ侵攻でプーチンは、「現代のヒトラー」を呼ばれるようになりました。
世界中で、プーチンの写真に、ヒトラー風のヒゲと髪の毛が描かれている写真を掲げ、大勢の人が(ヒトラーとプーチンを合わせて)「プトラーを止めろ!」と行進しています。
ウクライナとの戦闘に勝っても負けても、【 戦略的敗北 】は決定済みです。
そんな時に、岸田さんが、「北方領土交渉が停止されると困るから、プーチンに歩み寄ろう」と考えたらどうなるでしょうか?
1939年、第2次大戦がはじまったとき、日本は、ナチスドイツの同盟国ではありませんでした。
しかし、翌1940年、日本は愚かにも、ナチスドイツ、ファシズムイタリアの軍事同盟国になったのです。
今回、岸田さんがロシアに寄り添えば?
すでにロシアに寄り添っている中国と共に、日中ロ三国同盟になってしまうでしょう?
これは、「完全敗北への道」です。
だから、岸田さんは、ロシア外務省の発表に一喜一憂する必要はないのです。
今までどおり、欧米と歩調を合わせ、強い態度を維持して欲しいと思います。
それが、日本の国益、日本が勝利する道です。