全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
皆さんご存知かと思いますが、安倍総理とプーチンさんが22日、クレムリンで会談しました。
結果はどうだったのでしょうか?
<平和条約交渉、本格化を確認…日露首脳会談
読売新聞 1/23(水) 1:28配信
【モスクワ=梁田真樹子、畑武尊】安倍首相とロシアのプーチン大統領は22日午後(日本時間22日夜)、モスクワのクレムリン(大統領府)で会談し、日露の平和条約交渉の本格化を確認した。
条約締結に向けた関係強化の一環として、今後数年で両国の貿易額を現在の1・5倍、少なくとも300億ドルに引き上げることで一致した。>
<日露の平和条約交渉の本格化を確認した。>
そうです。
そのためには、関係強化が必要だから、貿易額を増やすと。
「具体的な話」が好きな日本国民の大半は、「なんじゃそりゃ?要するに、何も具体的な成果はないってことだな」と思うでしょう。
表面的にはその通りです。
しかし、日ロ関係はこれでいいのです。
なぜ?
皆さんご存知のように、中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!!!」
と宣言しています。
そして、もはやニュースにならないほど領海侵犯を繰り返している。
それどころか、ロシア、韓国に、「反日統一共同戦線をつくり、日本を壊滅させようぜ!」とオファーしている。
●全国民必読証拠はこちら。↓
http://rpejournal.com/rosianokoe.pdf
そう、日本、第1の脅威は、北朝鮮でもロシアでも韓国でもなく、間違いなく中国なのです。
なぜ、日本は、領土問題で妥協しないロシアと仲良くしなければならないのか?
しょっちゅう書いているように、「中国とロシアが組んだら日本に勝ち目はないから」です。
安倍総理もこの点、十分理解されているようです。
産経新聞1月23日付を見てみましょう。
<首相が、平和条約締結を目指すのは、中長期的に見て安全保障と経済の両面でロシアとの関係強化が不可欠だと考えているからだ。「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」首相は周囲にこう語った。日本の安全保障は将来も日米同盟が基軸となるが、米国の実力は相対的に低下しており、中露が連携を強めれば太刀打ちできなくなるからだ。>
「中露が緊密に手を組む事態だけは避けなければならない」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これは、まさにRPEが100万回書きつづけてきたことです。
RPEでは、ロシアが無礼で、日本国民が怒っていた時も、変わらず、同じことをいいつづけてきました。
総理の口からこのような言葉を聞けるとは、本当にありがたいことです。
<しかも中国はこの30年間で国防費を51倍に増強し、東シナ海や南シナ海で権益膨張を続けている。首相がいかに習近平国家主席ら中国指導部と友好を演出しようと、尖
閣諸島(沖縄県石垣市)をあきらめることはあるまい。>(同上)
<尖閣諸島をあきらめることはあるまい。>
とあります。
「沖縄をあきらめることはあるまい」というのもつけ加えたいところです。
<ならばせめて北方の脅威は取り除き、極東地域でロシアと安全保障でも協力すべきではないか。首相のこの判断は筋が通っており、平和条約締結はその大きな推進力となり得る。>(同上)
ここは、微妙なところです。
ロシア的にも、「平和条約締結」は望むところ。
しかし、戦争で強奪した土地は、返したくない。
だから、本音では4島返還の話も、2島返還の話すら、聞きたくない。
ロシアの「領土観」は「戦争のたびに領土は変わる。
ロシア(ソ連)は戦争に勝ったのだから、4島がロシア領になるのは当然だ」というもの。
だから、ロシア人の耳には、安倍総理の「平和条約を締結せねば」という言葉は、「平和条約」と聞こえず、「島返せ!」とだけ聞こえる。
この辺は、難しいところです。
では、プーチンは、なぜ安倍さんと25回も会っているのか?
要は、金儲けがしたいのです。
クリミア併合で、日米欧は、ロシアに制裁している。
それで経済が苦しい。
だから、金儲けの話がしたい。
それで私は、「金儲け7、平和条約3ぐらいがちょうどいい」と書きました。
安倍総理の記者発表にこんな言葉がありました。
<「経済関係をより緊密にし、観光はもとより、地方交流や大学交流などさまざまな交流を増やし、この目標をともに達成していきたいと思います。両国の議員、議会間でも活発な交流が行われています。昨年7月には伊達忠一参院議長が訪露し、史上初めてロシア上院で演説を行いました。12月には両国の友好議員連盟の間でさらなる協力に向けた了解覚書が署名されました。日露関係発展のための重要な柱として本年も議員・議会間交流を後押ししていきます」「8項目の協力プランを提案してから2年半以上がたち、すでに170以上のプロジェクトが生み出されています。先月には日本企業によるハバロフスク空港への経営参画、ガスプロムによるサムライ債の発行が決まりました。
日露の企業がお互いに手を携えるビジネスに前向きであることを歓迎します」>
ロシアが望んでいるのは、まさにこれです。
だから、日本も、「金儲け中心」でいくべきなのです。
こう書くと日本では、「金だけ奪われて」という反応がきます。
「金儲け」というのは、ロシアだけに儲けさせろという話ではありません。
日本もロシアも儲かる話をしましょうという意味です。
繰り返しますが、日ロ関係が良好であることは、「対中国」で大事なのです。
▼日本は中ロに勝てない
日本には領土問題が三つあります。
すなわちロシアと北方領土問題。
韓国と竹島問題。
中国と尖閣、(中国によると)沖縄問題。
これ「領土問題」と一言でいいますが、本質はずいぶん違います。
ロシアは、北方4島を実効支配して現状に満足してる。
韓国は、竹島を実効支配して現状に満足している。
中国は、尖閣を実効支配していないので、不満である。
つまり、領土問題でロシア、韓国と日本が戦争する可能性はありません。
日本から攻撃すればありえますが、日本はしかけないでしょう?
しかし、中国は現状に不満なので、日中戦争が起こる可能性はある。
その時、戦争参加国はどうなるのでしょうか?
1、日本、アメリカ 対 中国
これは、日本の必勝パターンです。
ですから、日本は、アメリカ大統領がどんな人であろうと、日米関係を第1に考え、良好な関係を保っておく必要があります
2、日本 対 中国
日本で反米派が力を増し、日米関係が悪化すればこうなります。
このパターンで、日本が勝つのは難しいでしょう。
おそらく尖閣は、中国に奪われます。
「日米関係悪化」
これ、バリバリありえますから要注意。
皆さん、「トラストミー」鳩山政権時代に、どれだけ日米関係が悪化したか、決して忘れないでおきましょう。
3、日米 対 中ロ
このパターンでは、どちらが勝つかわかりません。
しかし、そもそもアメリカが、尖閣を守るために中ロ二大国と戦うでしょうか?
私は、難しいだろうと思います。
4、日本 対 中ロ
このケースで、日本に勝ち目は1%もありません。
こう見ると、日本は、
日米 対 中国
という必勝パターンを常に維持しておく必要がある。
そのために必要なことは、二つです。
1、アメリカと良好な関係を維持しつづける
2、尖閣有事の際、ロシアが中国側にたって参戦しないようロシアと良好な関係を保ちつづけること
もし中国が、「尖閣に侵攻すれば、必ずアメリカがでてくるだろう」「ロシアは、日本と仲がいいから助けてくれないだろう」という予測をたてるなら、尖閣侵攻はないでしょう。
逆に、「尖閣に侵攻しても、アメリカは日本を助けないだろう」「ロシアは、中国の味方だろう」と予測すれば、戦争になる可能性が高くなります。
というわけで、領土問題が進展するかどうかに関わらず、対中国で、日本はロシアと友好的関係を維持するべきなのです。
これ、決して私が28年モスクワに住んでいたからいうのではありません。
あのルトワックさんも、同じことをいっています。
彼は、その著書「自滅する中国」の中で、日本がサバイバルできるかどうかは、ロシアとの関係にかかっていると断言しています。
<もちろん日本自身の決意とアメリカからの支持が最も重要な要素になるのだが、ロシアがそこに参加してくれるのかどうかという点も極めて重要であり、むしろそれが決定
的なものになる可能性がある。> 188p)
というわけで、安倍総理の対ロ外交、うまくいっています。
もう少し、「私が領土問題を急いで解決する!」という欲望を減少させた方がいいとは思いますが。

日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
- 作者: 北野幸伯
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2014/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (5件) を見る

プーチン 最後の聖戦 ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?
- 作者: 北野幸伯
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2012/04/05
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (21件) を見る

中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義
- 作者: 北野幸伯
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2007/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 15回
- この商品を含むブログ (14件) を見る