ロシア、ウクライナ侵攻に向けた情報工作を開始
全世界の裏RPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
ロシアが、ウクライナ侵攻に向けた情報工作を開始したようです。
どういうことでしょうか?
▼ウクライナ情勢復習
少し復習しておきましょう。
2014年2月、ウクライナで革命が起き、親ロシア派ヤヌコビッチ政権が崩壊しました。
2014年3月、ロシアは、ウクライナからクリミアを奪います。
2014年4月、ウクライナ東部でロシア系住民の多いドネツク、ルガンスク州が独立を宣言。
親欧米のウクライナ新政府は、当然独立を認めず、内戦が勃発しました。
この戦いは、ウクライナ新政府を支援する欧米と、ルガンスク、ドネツクを支援するロシアの代理戦争です。
内戦は2015年2月、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの首脳による「ミンスク2」合意で、停戦が成立しました。
それから約7年、小競り合いはあるものの、大規模な戦闘は抑えられてきたのです。
▼プーチン、怒りの根源
ところが昨年末、ロシアは、ウクライナ国境に大軍を集結させました。
なぜでしょうか?
プーチンは、「ウクライナをNATOに加盟させないことを確約しろ!」とアメリカ、NATOに迫っています。
なんのことでしょうか?
戦後、ドイツは、アメリカ資本主義陣営の西ドイツと、ソ連共産陣営の東ドイツに分断されました。
しかし1980年代末になると、ソ連側があまりにも劣勢になった。
1989年、西ドイツと東ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊。
つづいて、いわゆる東欧民主化革命が起こりますが、ソ連はこの動きを止めることができませんでした。
1990年、ドイツ再統一の動きが活発になっていきます。
ソ連は「ドイツ再統一」を認める条件を出しました。
「NATOをドイツより東に拡大しない」こと。
アメリカは、約束しました。
当時は、16か国でした。
これでもずいぶん多いです。
しかし、ソ連崩壊後、アメリカは約束を破り、NATOの東方拡大をつづけていったのです。
そして現在、NATO加盟国は30か国まで増えています。
どうでしょう?
「30か国からなる反自国軍事同盟」は、脅威でしょうか?
もちろん脅威です。
しかも、拡大の動きは止まっていないのです。
アメリカやNATOは、ロシアの西隣の旧ソ連国ウクライナ、あるいはコーカサスの旧ソ連国ジョージアをNATOに引き入れようとしています。
そうなると、NATOとロシアの間の「緩衝地帯」が消滅する。
プーチンは、「これは許しがたい!」と考えているのです。
この「緩衝地帯が不可欠」という考え方、理解不能の人もいるでしょうか?
しかし、昔は日本も、「ロシアの南下政策を止めるために、緩衝地帯として朝鮮半島や満洲が必要だ」と考えたのです。
▼なぜ今?
プーチン、怒りの根源は理解できました。
彼は、NATOのさらなる拡大、特にウクライナ、ジョージアへの拡大を阻止したい。
これは、わかりました。
しかし、これは、長いことつづいている問題です。
なぜ、「今になって」ウクライナ国境に大軍を集結させ、アメリカやNATOを脅しているのでしょうか?
私は「米中覇権戦争が激化していること」と関係があるのだと思います。
アメリカの主敵は中国です。
それで、たとえば米軍は、アフガニスタン、イラク、シリアなどから引き上げている。
要するに、資源を「対中国」にシフトさせている。
プーチンは、「アメリカは今、中国との戦いで忙しい。それで、二方面で戦うのを避けたいはずだ。だから、譲歩を勝ち取れるのではないか」と見ていた。
▼米ロ協議の結果は?
1月10日〜13日、アメリカとロシア、NATOとロシアの協議が行われました。
ロシアの要求は、「NATO不拡大の法的保証」です。
協議の結果は、どうだったのでしょうか?
結局、アメリカもNATOもロシアも譲歩せず、状況は好転しませんでした。
<ロシアの外務次官らは各協議の終了後、米欧の記者も参加する形での記者会見を開き、「NATO不拡大の法的保証は絶対に必要」とロシアの主張を声高に展開した。旧ソ連構成国のウクライナとジョージア(グルジア)を「将来の加盟国」としたNATO首脳による2008年の宣言を今年6月の首脳会議で撤回するよう求めるなど、要求はエスカレート。外交交渉がまとまらない場合は「軍事技術的手段を用いてあらゆる措置を講じる」と脅しをかけた。>(時事 1月14日)
現状、プーチンの脅しは「空振り」になっています。
▼ロシア、ウクライナ侵攻に向けた情報工作を開始
ところが大問題があります。
プーチンは、「軍事力行使を躊躇しない男」なのです。
彼が軍事力を使った例を見てみましょう。
・第2次チェチェン戦争
・ロシアーグルジア戦争
・シリア内戦への介入
・クリミア併合(戦闘はありませんでしたが、ロシア軍がバックにいて併合を速やかに行いました。)
・ウクライナ内戦支援(ロシアは、ウクライナからの独立を目指すルガンスク、ドネツクを支援しています。)
・カザフスタンへの介入(最近、カザフスタンの大規模デモを鎮圧しました。)
つまり、アメリカ、NATOがロシアの要求を拒否しつづけると、ロシアがウクライナに侵攻する可能性が高まってくる。
なんのために?
親ロシアのルガンスク、ドネツク州は現状、「事実上の独立状態」にある。
ここに入ることで、その独立(ウクライナからの独立、ロシア依存)を確固たるものにする。
ロシアは08年のロシアージョージア戦争後、ジョージアからの独立を目指す、
アプハジア、南オセチアを「国家承認」しました。
同じようなパターンになる可能性があります。
そして、実際ロシアは、ウクライナ侵攻に向けた情報工作を開始したようです。
毎日新聞1月15日。
<米ホワイトハウスのサキ報道官は14日の記者会見で、ロシアがウクライナ侵攻の口実をでっち上げる目的で、工作員のグループをウクライナ東部に配置しているとの情報が
あると明らかにした。>
「ウクライナ侵攻の口実をでっちあげる」とはどういうことでしょうか?
戦争で、「どっちが先に攻撃したか」は、とても大切な問題です。
日本も、先にアメリカ(真珠湾)を攻めたので、「狡猾だ!」といまだにいわれます。
だから、ロシアとしても、「ウクライナが先に攻撃したから、仕方なく反撃した」
という状況を作り出したい。
そのための工作員なのです。
<工作員らはロシアが後ろ盾となっている武装勢力などに対して「自作自演」の市街戦や爆破工作を仕掛ける訓練を受けているという。サキ氏は「『ウクライナによるロシア側への攻撃が差し迫っている』と非難し、侵攻の理由にする環境作りをしている」と批判。>(同上)
たとえば、ルガンスク、ドネツクで工作員による爆破が起こった。
ロシアは、「ウクライナ軍がミンスク2停戦合意を破り、ロシア系住民を大虐殺している!」
と宣言し、ウクライナ侵攻を開始する。
ロシアの動向を注視していましょう。