あなたの悩み、エピクテトス先生に聞いてみよう。
【グロービス特別対談】『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』〜お悩みへの回答〜
「誰だそれ?」という人のためにちょっと説明すると、エピクテトスは紀元1~2世紀のギリシャ・ローマで活動した哲学者で、「ストア派」と呼ばれる哲学流派の代表格。奴隷の身分から身を起こして哲学教師として生涯を閉じるという波乱の人生を送った人でもあります。すでに当時から尊敬を集めていたけれど、後世の人びとにも大きな影響を与えているね。モンテーニュやパスカル、それに夏目漱石なんかも愛読者だった。
じつは著書は一冊もないんだよね。エピクテトスは、彼が尊敬するソクラテスと同じように、物を書かない人だったから。でも幸運なことに、彼が弟子たちに語って聞かせた言葉の一部が書き留められて、『人生談義』という本にまとめられた。漱石たちが愛読したのもこれだね。
この『人生談義』が傑作なんだよね。「談義」というくらいで、弟子や来訪者から寄せられる相談にエピクテトスが答える様子が記されている。宇宙や世界の原理とか成り立ちといった抽象的なことを語る本ではない。古代ギリシャ時代の人生相談といったらいいかな。仕事や人間関係、お金や地位といった日常的な問題がテーマになっている。
2000年も昔のおっさんの話を聞いてなんになる? なんて思うかもしれないけれど、さにあらず。この『人生談義』ほどためになる本はないよね。我々がふだん抱くような悩みなら全部対応できちゃうんじゃないかっていうくらいの勢い。
当たり前のようでいて大事なポイントは、エピクテトスの哲学というのが、誰にでも使える知の技法だってこと。特定の資質や才能をもった人にだけ向けられたものではないし、はたまた霊感とか超能力とかいう特殊能力も必要ない。ものの道理を理解しようとする気があればそれで十分。彼は哲学者として、あくまで理詰めでものを考える人だったからね。
時代を超えて人の心に響くわけだ。エピクテトスの哲学には、「きみにはいったいなにができるのか」という根本的な問いを、その人となりに合わせて立てることを教えてくれるようなところがあるからね。いいかえれば、ひとりひとりが個人的な問いを立てるそのやりかたを、万人にたいして教えてくれるようなところがある。
楽しくも苦しくもある現代社会で、いかに幸せに、そしてよく生きていくことができるか?
どんな自己啓発書にも負けない、古代ギリシャの賢人の知恵にぜひ触れてもらいたい。