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誰も読み解けなかったブッダの「真の教え」をいま明かそう

 

道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心

 

 「民主主義」の意外な重要性とは

管賀 江留郎少年犯罪データベース主宰
プロフィール
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世界と人間の謎のすべてを<道徳感情>で解き明かす――アダム・スミス道徳感情論』の語られざる本質に迫った「頭で冷静に考えて行動する人は、なぜすぐに淘汰されるのか」の次は、ブッダ認知バイアス克服と民主主義の謎について。『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』著者による渾身の論考です。

世界と人間の謎を解く
ブッダ認知バイアス克服と民主主義という壮大なる三題噺をやらかすわけですが、たんなる大喜利ではありません。これによって、過去の科学者や思想家たちが束になっても解けなかった世界と人間の謎が、すべて解き明されてしまうことになってしまうのです。

この連載でこれまで見てきたように、人間社会で起きる悲劇はすべて<道徳感情>が引き起こす認知バイアスが元凶なのでした。そこから人類が解放されるにはどうしたらいいのか。その道を指し示すことにもなるのです。

ブッダほど偉大な存在なら、認知バイアスなんかすぐに克服して、世界を正しく見ることができたかもしれません。しかしながら、ブッダの境地に達した者が人類史上に果たして何人いたでしょうか。のちに詳しく述べるように、ブッダその人でさえ、ほんとうに悟りの境地に達していたかどうかは怪しいところがあります。

ましてや、私たちのような凡人は、どう頑張っても無理です。ところが、その凡人が何万人か何千万人か集まって、ただわいわい云い合っているだけで認知バイアスをある程度は克服してしまう。つまりは、ブッダの境地に近づいてしまう。

この民主主義のなんとも不思議な力について、これから語ることになります。

しかも、「三人寄れば文殊の知恵」というのは、知恵が三倍になって賢者となるのではなく、人々の因果や物語を三分の一ずつに分断し、筋の通った思考ができないアホにすることによって認知バイアスを克服するのだということを証明しようというのです。

極めて非効率で、一本筋の通った思想のない民主主義。そんなものが、なにゆえ明確なビジョンを掲げ意志決定も早くて効率のいいはずの独裁やエリート少数支配より優位になって、歴史上に生き残ってきたのか。ここにその秘密があります。

驚くべきことに、ブッダは2500年も前に、この原理を見抜いていたのでした。それなのに、弟子たちを含めて今日まで誰ひとりとしてその真の教えに気づいていません。

これからこの文章を読むあなたは、2500年のあいだ人類の誰ひとりとして読み解くことのでなかった世界の秘密をその手につかむこととなるのです。

人間と動物共通の認知バイアス
まずその前に、認知バイアスとはなんであるのかというお話をしなければなりません。一番簡単なのは、この有名な錯視です。

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絶対、上が長いよね?

実際には同じ長さなのに、上のほうが長く見えます。眼の錯覚だと知識としては判っていても、やはり上のほうが長く見えてしまいます。どうして、こんなことが起きるのでしょうか。

生存競争に有利だからこそ、進化の過程でこんな見え方になるような身体の仕組みになってしまったのでした。

こういう絵だけではなく、我々の眼の網膜に映っている光景はすべて、二次元的な平面映像です。それを脳内処理によって立体的に知覚しているのです。奥行きを感じられたほうが、狩猟採集では獲物を捕るのに有利ですし、迫ってくる怖い猛獣からも逃げやすくなります。

遠くにいるライオンがネコより小さく見えるから、「ネコより小さくて可愛らしいな」なんて思っていたら大変です。「ほんとは自分より大きくて危険な相手だ」と瞬時に判断できる者だけが、一足早く逃げ出して生き残りました。

しかし、人間の奥行きの知覚はそれほど正確でもありません。自然界の複雑な光景を完全に正しい立体として捉えるには脳の処理に時間が掛るため、かなり適当な見え方のまま、素早く危険から逃れることを優先しているのです。

目の前の光景を正確に見ることのできる人もいたはずですが、時間が掛っているうちに猛獣に喰われて滅んでしまいました。一瞬の差が生死を分けて、自然淘汰されるのです。

自然界の光景さえ正確には見えていないのに、人類最古であるスラウェシ島の洞窟壁画からでも4万年しか経験していない平面画像を見ることに、人間の能力はまったく追いついていません。洞窟の中は真っ暗で、年に何回かの儀式のときしか見る機会もなかったでしょう。日常的に平面画像を見るようになったのは、せいぜいこの数千年です。

そのために、両端にある小さな羽くらいの情報に惑わされ、紙の上の線を立体として知覚してしまいます。だから、同じ長さに見えても、手前よりも奥にある線のほうが長いはずだと脳が自動的に判断してしまうのです。

人間以外の動物も、猛獣から逃げたり、逆に獲物を追っ掛けたりするため有利になるよう進化しています。ですから、副作用として錯視があるのです。それぞれに敵や獲物や逃げ方が違うので眼の位置も違い、錯視の内容も違います。しかし、目の前の光景が時々おかしな具合に見えてしまうのは、人間も動物も変わりありません。

ほかの動物にはない、人間特有の認知バイアス。それをもたらす根源こそが、この連載のテーマである<道徳感情>なのでした。

人間特有の認知バイアスと輪廻
第一回目で詳しく述べたように、人類は生存率を上げるため、言葉による<評判>を媒介とした協力関係システム<間接互恵性>を進化の過程で身に着けました。

そのため良きことをした者には報酬を、悪しきことをした者には罰を与えたいという欲求である<道徳感情>が生れたのです。

動物にも見られる直接的な助け合いなら、すべての出来事は目の前で起きます。しかし、<評判>が巡り巡ってくる<間接互恵性>は、ほとんどのことが目に見えないところで起きるのです。そんな状態でも、良きことや悪しきことを誰がやったのか探るため、人間は因果推察能力が発達しました。

それは自分の生死に関わる最重要のシステムだったため、人間は因果に異様にこだわるようになります。やがては、誰かを罰したいという<道徳感情>が人間の因果推察能力を肥大化させ、因果の無いところにまで無理やり因果を見つけるようになってしまったのでした。

たとえば、死んでもまた生まれ変わるという、輪廻なんて考え方は、その典型です。

良きことをした者には報酬を、悪しきことをした者には刑罰を与える<因果応報>で世の中は成り立っているはずなのに、現実には生れたばかりで何も悪いことをしていない赤ん坊が悲惨な死を遂げたり、極悪人が幸福なまま一生を終えたりします。

これは、前世で悪いことをしたからだ、来世で酷い目に遭うんだぞという、原因や結果を前後に想定しなければ人間の<道徳感情>が収まりません。無理やり因果の帳尻を合せるために、輪廻なんてものが頭の中で生み出されたのでした。

輪廻はインド独自の思想だと云う人もいるみたいですが、天国や地獄、あるいは怨霊なんてものが昔から世界中にあるのですから、同じことです。

とくに怨霊は、理不尽な最後を迎えた者に、祟りの伝説という形で<間接互恵性>の罪と罰のバランスのゆがみを死後にでも正常化しようとするだけではありません。

<間接互恵性>を成り立たせるため人間に備わった因果推察の性質により、なにか凶事が起れば必ず原因があると考え、祟りだと本気で思い込むという、因果の逆流でもあります。輪廻における前世と同じベクトルなのです。

地震やハリケーンのような自然災害でも、悪いことをしたから天罰が下ったと考える人が東洋西洋問わず現代でも世界中に数多くいます。この因果を推定できないはずのところに因果を求めてしまう人間の性質が、目の前の現実を見えなくする認知バイアスの根源なのです。

アダム・スミスの『道徳感情論』の回で述べたように、凶悪犯罪によって<道徳感情>が強く刺激されると、因果の無いところに因果を見てしまう錯誤の典型である冤罪が発生しやすくなります。

ユースバルジの回で述べたように、格差が拡大する不平等により<道徳感情>が強く刺激されると、頭の中で組み立てた単純な因果による幾何学的な美しい理想に取り憑かれる右翼や左翼が増え、テロや革命を引き起こし、世界を大混乱に陥れることになります。

これらはすべて、人間特有の<道徳感情>による認知バイアスがもたらす悲劇なのです。

ブッダ全12巻漫画文庫 (潮ビジュアル文庫)

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ブッダの世界認識
こういうやっかいな人間社会に登場したのが、まさしくブッダです。

世界のすべての事象を、縦横に関連づけられた因果の織物として捉え、さらにはその因果を断ち切った<悟り>の境地に達してこそ真実は見えるようになるという仏教の思想を、ブッダは打ち立てました。

事象のひとつひとつをたんなる偶発的でランダムな出来事とは考えず、すべてが意味を持って連鎖する<物語>として読み取ってしまう人間の本性が、真実を覆い隠す<迷い>を引き起こすことを知っていたのです。

つまり、人間が因果に囚われるために、認知バイアスを招いて目の前の現実が見えなくなってしまうことに気づいていたわけです。

さらに人間関係が、因果に囚われる元凶だということも、ブッダは理解していました。だからこそ、<悟り>を得て認知バイアスを克服するためには、まず家族や仕事を捨てて出家することが必要だと考えたのです。

人類が進化の過程で身に着けた<間接互恵性>のメカニズムを、最新の進化心理学なぞを待つまでもなく、2500年も前に完璧に見抜いていたわけです。

輪廻から脱して解脱するというのは、要するに<間接互恵性>を断ち切るということです。そうすれば、<道徳感情>を元凶とする認知バイアスから逃れて真実が見えるようになる。

仏教というのは、因果そのものである縁起だとか業だとかが根本思想だと考える人がいるみたいですが、それがあるのは前提で、縁起や業を断ち切らないと仏教にはならないはずです。輪廻を断ち切って涅槃に入るのが、仏教の究極の目標なんですから。

しかし、ブッダと同時代にいた六師外道のように、輪廻などの既成の思想を単純に否定するのとは違います。輪廻などは<間接互恵性>によって人の心に深く刻まれた実在する現象であることをまず認めて、それを乗り越える方策を説いています。

錯覚だと判っていても、錯視の図を眺めるとやはり上の線のほうが長く見えてしまうように、認知バイアスは非常に強力です。

たんに俯瞰の眼を持つだけでは克服できないことが、ここから思い知らされます。「それは錯覚ですよ」なんて云って否定するくらいのことでは、人間の認識はなにも変わらないのです。

悟りは反道徳的で反社会的
99人を殺したという極悪人のアングリマーラを、ブッダが弟子にして<悟り>を開かせたという初期仏典に出てくる話も、<道徳感情>克服という観点から見たらじつに判りやすい。

元々、<間接互恵性>は罪を犯した者を罰するために進化したシステムなんですから、それを捨てれば、どんな悪事でもどうでもいいことになります。それでこそ、因果を断ち切って<悟り>の境地に達したということになるのです。

<悟り>を開くというのは、人間社会を成り立たせている<間接互恵性>を乗り越えるということですから、必然的に反社会的で反道徳的となる。なんにもありがたいことはありません。

ただ、認知バイアスを克服し、目の前の現実をありのままに見ることができるようになるというだけです。

認知バイアスは人類の進化の副産物で、正しい人間であるという証拠。ですから、認知バイアスを克服するというのは、正常な人間ではなくなってしまうということなのです。

しかし、<間接互恵性>から来る<道徳感情>が高まりすぎても、イスラム国のような極悪非道のことを平気でするようになります。ユースバルジの回で詳しく述べたように、殺人のほとんどは己の<評判>を高めたいという<道徳感情>から引き起こされるのです。

道徳感情>の暴走から起る悲劇を抑えたいのであれば、<間接互恵性>を破壊する反社会的で反道徳的な<悟り>にも大きな意味があるのです。 

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