★トランプがドル体制を崩壊させる
全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは!
北野です。
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「日本を幸せな国にする具体的方法」
を超明確に記しています。
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ありがとうございます!
新刊が無事に発売になったので、徐々に「通常モード」に戻していきたいと思います。
今日はトランプさんの話。
皆さん、トランプさんのことどう思いますか?
反中派の皆さんは、米中覇権戦争がはじまったことについて、「いいぞトランプ!中国をぶっつぶしてくれ!」という感じでしょうか?
逆に「親中派」や中国との関係が強い企業の皆さんは、「貿易戦争はじめやがって迷惑だ」という感じでしょうか?
私は、「トランプさんが反中で日本は助かるが、彼は戦略が下手」という意見です。
これ、大昔から同じことを書きつづけています。
その例は、「イラン核合意からの離脱」ですね。
この合意に参加したのは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国、イラン。そして、この合意からの離脱を表明したのは、アメリカだけ。
なんと、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国、イランが合意維持を支持している。
アメリカは、この問題で完全に孤立しているのです。
先日、これに関連して、「週刊エコノミスト」11月27日号にいろいろ面白い情報が載っていました。
内容は、「反トランプで欧州、ロシア、中国、イランが一体化。共同でドル体制を攻撃している」。
見てみましょう。
2015年7月、いわゆる「イラン核合意」が成立しました。
オバマさんの時代です。
2016年1月、対イラン制裁が解除されました。
2018年5月、トランプさんは「合意離脱」を宣言。
同8月、トランプ、対イラン制裁の復活を宣言。
これはアメリカの単独制裁です。
しかし、この国は、他国や他国企業にも「イランと取引するなよ!したらおまえらも制裁対象だぞ!」と脅迫する。
そして、「イランから原油を買うなよ!」と強要する。
ところが、アメリカのいうことを聞かない国がある。
彼らは、どんな風に反撃しているのか?
「エコノミスト11月28日号」からピックアップしてみましょう。
<一連の制裁がイラン産原油の輸入国の「ドル離れ」を引き起こしているのだ。
イラン制裁に従わないと表明した中国は人民建て輸入を続け、>(19p)
既述のように、アメリカは世界の国々に、「イランからの原油輸入を止めろ!」と命令した。
ところが中国は「イラン制裁には従わないよ!」
と宣言し、【人民建て輸入】を続けている。
ちなみに、サダム・フセインは2000年、「イラク産原油の決済通貨をドルからユーロにかえる!」と宣言した。
それ以前、世界の国々は、「ドルでしか」石油を買うことができなかったのです。
これを、「ペトロダラー制」といいます。
おかげで、アメリカは万年膨大な貿易赤字を出しても安泰だった。
ところが、今では中国が、【人民元】でイラン原油を輸入している。
中国だけではありません。
<インドも“包括的アプローチ”としてドル以外の通貨での支払いをにおわせた。
原油輸出国のインドネシアも、制裁リスクのあるドルから人民元へ決済通貨の一部切り替えを検討する。>(同上)
▼トランプに反逆する欧州
アメリカに反抗しているのは、中国やイラン、インドネシアだけではありません。
「同盟国(地域)」欧州も反逆している。
<英「ファイナンシャル・タイムズ」紙は9月12日付の紙面で、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長が
「EUの対米金融依存度を減らすために、ユーロを世界の準備通貨に変えるつもりだ」
と語ったと報じた。
同紙によれば、ユンケル氏は
「EUはエネルギー輸入の80%以上を米ドルで支払っている。だが、その多くはロシアや中東から輸入したものであって、米国からの輸入額は全体の2%でしかない。我々はそうした状況を改める必要がある」と述べた。>(25p)
ロジックはわかりますね。
欧州は、主にロシアや中東から原油を買っている。
支払いはドルでしている。
ユンケルさんは、「別にユーロで払ってもいいだろう」といっている。
イラン問題もそうですが、トランプさんは、激しく欧州いじめをしていますね。
それで、マクロンさんは、NATOがあるのに、「欧州軍をつくろう!」といったり、反米行為をしている。
さらに、
<だが、より驚くべきは、複数のEU外交官の話として、「今年、イランからの原油輸入決済代金をドルからユーロに切り替える」と報じていたことである。>(同上)
これ、ホントであれば二つの意味で重要です。
1、欧州は、「イランからの原油輸入をやめろ!」というトランプの命令に従う気がない
2、しかも、ついでに「ドル外し」をしてしまうつもり
▼ロシアも・・・
<すでに中国は一足先にドル決済体制に反旗を翻している。ロシアやイランからの原油は人民元建てで輸入されており、>(同上)
▼繰り返される歴史
ここまでをまとめてみましょう。
1、トランプの「イラン合意離脱」は、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、イランを一体化させた。
2、中国は、イランからの原油輸入をつづけている。
3、しかも【人民元】で決済している。
4、欧州は、ロシアや中東からの原油決済をドルからユーロに切り替えようとしている。
5、欧州は、トランプの意向を無視して、イラン産原油の輸入をつづける方針。
6、しかも、ドルではなくユーロで。
7、ロシアは、対中原油輸出代金を【人民元】で受け取っている。
戦略的ドル離れが加速しています。
実をいうと、こういう動き、以前にもあったのです。
既述のように、フセインは2000年、イラク産原油の決済通貨をドルからユーロにかえた。
フセインをプッシュしたのは、フランスでした。
で、どうなったか?
ところが、「ドル離れのトレンド」はその後もつづいていったのです。
ユーロのパワーはドンドン強くなり、
絶好調だったプーチン・ロシアは、「ルーブルを世界通貨にする!」などと宣言していた。
結果、何が起こったか?
そう、リーマン・ショックです。
これ、一般的説明とは全然違いますね。
00〜08年の【裏歴史】を知りたい方は、いますぐこちらをご一読ください。
全部わかります。
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また、同じこと(リーマン・ショック再来)が起こるのでしょうか?
「バリバリ兆候がでてきている」と思うのは、私だけではないでしょう。
▼なぜトランプは戦略下手といえるのか??
ここまで欧州、ロシア、中国、イランが、反トランプで一体化していることを見てきました。
ところでトランプは、「対中国戦争」をはじめたのでしょう?
彼が戦略的思考をできる人なら、欧州、ロシア、イランを味方につける動きをするはずでしょう?
そして、同盟国日本は超大事にされるはずです。
ところが実際彼は、誰に会ってもいいたいことをいっている。
確かにそれは「アメリカ・ファースト」です。
それで、彼が動けば動くほどアメリカの敵は増えていくのです。
「ルトワックさん、ミアシャイマーさん、トランプさんを助けてください!」
と神様にお願いしたい気分です。(涙)

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